トップメッセージ
トップメッセージ

強靭さと回復力を備えた
レジリエントカンパニーとして

「前中期経営計画2023(2023年度~2025年度)」の振り返り

目標未達も次につなげる投資は着実に実行

中期経営計画2023では、「製品と原料の多様化」を追求し、ニッケル高合金・ステンレス市場におけるトップサプライヤーとして地球の未来に貢献することを目標に掲げ、成長が見込める環境・脱炭素、およびターゲット市場である中国・インドにおける高機能材拡販に取り組んでまいりました。2023年度、2024年度にはEBITDA200億円、ROE10.0%を上回る収益を計上したものの、中国景気低迷の長期化や脱炭素化機運の鈍化を背景に、当社グループの戦略分野である高機能材の需要が低迷しました。また、一般ステンレス分野においては、海外から安価な輸入材の流入が高水準で継続し、その結果、最終年度は「高機能材部門売上高比率(単体)50%」「EBITDA200億円以上」「ROE10.0%」の目標はいずれも達成することができませんでした。経営者として、この結果は決して満足できるものではありません。一方で、事業環境が急速に変化を続ける中でも、自分たちにできることを着実に実行し、次の成長につなげるための基盤づくりは進めることができたと考えています。

まず多様な高機能材の安定増産を目指し、高精度・高性能スリッターライン、新冷間圧延機などの設備投資を着実に進めました。しかし、コストダウンなど効果の刈り取りはまだ十分とは言えません。今後は、投資した設備の稼働を高め、その効果を着実に収益へつなげていきます。また、インド・ムンバイに現地法人を開設、本格的な拡販活動を開始しました。今後、成長市場と位置づけるインド・中東地域における営業活動の拠点として、大きな役割を果たすものと期待しています。

さらに大江山製造所で取り組む「都市鉱山」由来のリサイクル原料の使用拡大も、計画通り進捗しています。多様なリサイクル原料を使いこなす技術力は、長年の実験と知見の積み重ねによって培われてきました。当社がこうしたリサイクル技術を有することは、循環型社会の構築に貢献するだけでなく、将来にわたる安定的な原料調達を支える重要な競争力になると考えています。

また大江山製造所では石炭からLNGへ、川崎製造所では重油から都市ガスへ燃料転換を進めたことで、2050年のCO2排出量実質ゼロに向けて大きく前進することができました。

代表取締役社長 浦田 成己
当社のありたい姿

新たな領域へ挑戦し続け、「SHINKA」を遂げる

2025年に創立100年という一つの節目を越え、新たな時代へ漕ぎ出すにあたり、次の100年に向け、さらなる飛躍を果たすべく、当社のありたい姿として「新たな領域で挑戦し続け『SHINKA』を遂げる」を掲げました。SHINKAにはさまざまな意味を込めていますが、私自身としては、創業以来世代を超えて受け継がれてきたDNAを次世代に伝えるとともに、これまで磨き上げてきた当社の価値を一段と高めていきたいという想いをこの言葉に託しています。

改めて当社の歴史を振り返ると、それは製品、製造設備、技術など、あらゆる面で挑戦の連続であったと感じています。当社には、世界的にも稀なニッケル製錬法の確立や、既存のステンレス製造設備で高機能材を量産化するなど、日本初・業界初を実現してきた事例も多くあります。既存の事例を参考にできない状況の中でも、「やってみよう」と試行錯誤を重ね、時には大胆な発想に思えるアイデアも取り入れて自ら進化を遂げ、当社ならではの独自性を築き上げてきました。私は、この「挑戦し続ける精神」こそが成長の原動力であり、創業以来受け継がれてきた当社のDNAであると考えています。

こうした精神は、2000年代の大きな変革期にも発揮されました。当社高機能材の主力市場であったブラウン管向け需要が、液晶テレビの台頭により急速に縮小する中、新たな活路を求めて海外市場への挑戦を決断しました。すべてが手探り状態の中、トライアンドエラーを繰り返した結果、高機能材の輸出量を大幅に増やすことに成功しました。当時、私は高機能材の海外市場開拓の一翼を担っていましたが、これは当社のDNAを受け継ぐ全社員の熱意が結集した結果であると確信しています。

この挑戦から20年以上が経過し、当社を取り巻く事業環境はさらに厳しさを増しています。海外では競争が一段と激化し、国内市場でも安価な輸入材の流入が続いています。その中にあって収益は一定の水準を維持しているものの、当社が強みとする高機能材にあっても、歩みを止めてしまえば、欧米メーカーはもちろん、新興国メーカーにも逆転される状況にあると感じています。私自身、長年海外営業に携わり、世界市場における厳しい競争を肌で感じてきました。「現状に満足しない」「競争に勝ち抜く」という意識をさらに高め、危機感とスピード感を持って常に競争に勝ち続けるという強い意志を組織全体により浸透させていく必要があります。

これから100年先の未来に向け持続的な成長を実現するために、「常に失敗を恐れず挑戦し、SHINKAし続ける」という意識を企業文化としてさらに定着させ、次世代へ確実に受け継いでいくことが不可欠です。──それこそが経営トップとしての私の最大の使命だと考えています。

代表取締役社長 浦田 成己
新中期経営計画2026-2028

強靭さと回復力を備えたレジリエントカンパニーとして

「当社のありたい姿」の実現に向け、2026年度(2027年3月期)からの3年間を対象とする「中期経営計画2026-2028」を策定しました。中期経営計画2026-2028で目指す姿として「ニッケル高合金・ステンレス市場のトップサプライヤーとして、新領域へ挑戦し進化を続けるレジリエントカンパニー」を掲げています。トップサプライヤーとは、世界レベルのQCD(品質・コスト・納期)競争力を有する企業。レジリエントカンパニーとは、困難な状況に直面しても、しなやかに対応し、成長へつなげていく強靭さと回復力を備えた企業を意味しています。この目指す姿には、これからも変化を恐れず挑戦し続ける企業でありたいとの想いを込めました。

前中計2023を策定した当時と比べても、社会環境や世界情勢は大きく変化し、想定を超える変化も数多くありました。だからこそ、中期経営計画2026-2028では、「変化すること」を前提に、改めてレジリエントな組織を構築し、稼ぐ力をさらに強化するとともに、未来につながる成長投資を積極的に実行していきたいと考えています。

3つの柱で成長戦略を推進し新たな領域を切り拓く

中期経営計画2026-2028では、①新たな領域での市場ニーズの探求と、必要なアイテムの開発と提供、②技術を追求し、あらゆるニーズに対応可能な生産体制を構築、③環境変化に対応し、持続可能な経営基盤を確立──という3つの基本戦略を設定しました。「高機能材」と「一般材」を事業の両輪と位置づけ、それぞれの発展を目指し成長戦略を展開していきます。

高機能材部門においては、今後、エネルギーや化学プラント、半導体関連の需要拡大が見込まれる一方、新規参入の増加により競争は一層激化すると予想しています。そこで本中期経営計画では、中長期的な視点に立ち、インド・中東地域といった成長市場での販売力強化に加え、新領域(当社が既存の鋼種・合金で供給できなかった分野、また従来は手掛けてこなかった鋼種・合金分野)への挑戦を成長戦略に掲げました。前中期経営計画期間中から実現性評価やマーケティング活動を進めてきましたが、本中期経営計画では実現可能性の高いテーマから順次事業化を進めていきます。

一方、一般材部門では、ニッチ材・極薄品・研磨品など、輸入材の影響を比較的受けにくい分野については、当社の強みである「小ロット多品種」対応力を活かせる領域です。こうしたニッチ材分野の拡販を進めることで輸入材との差別化を図り、国内ステンレス事業の基盤強化につなげていきます。

これらのニーズに対応可能な生産体制を構築するため、生産技術の進化によるQCD(品質・コスト・納期)競争力の強化を進めていきます。また、大江山製造所のカーボンレス・ニッケル製錬の活用など、原料の多様化や調達力の強化により、外部環境の変化にも柔軟に対応できる安定的供給体制の確立を図っていきます。

企業としての社会的責任を果たすとともに、自らの持続可能性を高めるため、環境配慮、人材施策、DX・AI活用などを通じ、環境変化に耐え得る経営基盤の構築を進めていきます。

新たな生産プロセスへの挑戦

これら3つの基本戦略を実行していくうえで、乗り越えるべき課題があります。当社はこれまで、既存のステンレス製造設備を高機能材の生産へと応用することで、製品ラインナップを拡充し、QCD(品質・コスト・納期)の競争力を高めてきました。しかし、今後さらに高度化・多様化する市場ニーズに応えていくためには、新たな生産基盤の構築が不可欠であると考えています。

具体的には、連続鋳造設備(CC)の改造、スラブ型再溶解設備(ESR)、グループ会社のナス鋼帯において、高機能材極薄対応設備の導入などを計画しています。その中でも、将来の成長を支える重要な技術開発として期待しているのがスラブ型再溶解設備(ESR)です。これまで試作開発を重ねる中で、既存の生産プロセスではどうしても越えられない壁がありました。スラブ型再溶解設備(ESR)はその壁を打ち破る有力な技術になると期待しています。本中期経営計画期間中に評価を完了し、次期中期経営計画期間中には、ESR技術によるハイグレード品の供給を実現したいと考えています。当社はこれまでも、幾度となく試行錯誤を重ねながら独自の技術を築き上げてきました。当社のDNAである挑戦の精神を持って着実に一歩を進めていきます。

これら新たな生産プロセスが稼働すれば、これまで不可能とされていたことが可能になります。このチャレンジにより一つの壁を越えることができれば、次のステージに向けた新たなアイデアも生まれ、さまざまな可能性が見えてくる──当社が「SHINKA」を遂げるための大きな第一歩になると確信しています。

人的資本強化

将来を見据えた人的資本計画の遂行

持続的な成長を実現していくうえで、人材は最も重要な経営資本であると考えています。どれだけ優れた設備や技術を備えていても、それを活かし、新たな価値を生み出していくのは「人」です。グローバル競争を勝ち抜き、成長市場で事業を拡大していくためには、多様な視点や新たな発想を持った人材が欠かせません。また、事業環境が激しく変化していく中、困難な状況を乗り越えられるレジリエントな企業であり続けるためには、物事を多角的に捉え、新しい価値やアイデアを生み出していくことが求められます。そこで当社は、多様な人材の活躍を促進する取り組みの一つとして、総合職採用の女性比率を20%以上とすることを目標に掲げ、採用・育成に取り組んでいます。

また、中期経営計画2026-2028を進めるにあたっては、市場開拓、技術開発の中核となる人材、生産力の基盤となる人材の採用と育成も重要です。とりわけ、高機能材の海外への拡販を担うグローバル人材の拡充も急務であり、キャリア採用も含めた積極的な採用活動を行っています。さまざまな研修制度や自己啓発支援制度に加え、海外機関や大学への派遣や社会人ドクター派遣などを通じて、意欲ある従業員が幅広い知識を得て経験を積んでもらえるような機会を提供しています。こうした人材が安全かつ安心して健康的に働くことができる環境を整えることも、経営として重要な責務だと考えています。

こうした人材が、仕事へのやりがいや自己成長を実感でき、能力を最大限に発揮できるよう、誰もが納得できる評価の実現も重要です。2023年度に年功序列によらない実力本位の登用と、公平で納得感のある評価・処遇の実現を目指し、新人事制度を導入しました。今後も適正な運用と改善を重ねることで、社員一人ひとりが「フェアに評価されている」と実感できる制度にしていきたいと考えています。また当社は若手の頃から大きな仕事に携わることができる文化があります。自らの仕事が会社の成長や社会への貢献につながっていることを実感しやすく、それが高い定着率や主体的な仕事への取り組みに結び付いています。このほか、働き方改革や職場環境改善、安全活動の推進に加え、DX活用による業務効率化、教育研修や自己啓発支援、適所適材の配置を通じて、自ら挑戦し、成長を実感できる企業文化の醸成にも積極的に取り組んでいます。挑戦する人材が育ち、その挑戦が新たな価値を生み出す企業であり続けたいと考えています。

「SHINKA」を遂げ、企業価値向上に向けた歩みを着実に進める

100年存続してきたからといって、積み上げてきた成功経験が次の100年も通用し続ける保証はありません。未来に向けては、むしろ日々厳しさを増す競争環境や社会からの要請が、絶えず当社に変化を迫ってくると考えています。だからこそ、当社は「SHINKA」という言葉に込めた通り、全方位で変化と挑戦を続けていかなければなりません。

本中期経営計画では、スラブ型再溶解設備(ESR)をはじめとする革新的な生産基盤の構築や、新領域への挑戦を行うべく、前中計比で設備投資を30%増、研究開発費を80%増とし、未来につながる成長投資を積極的に実行します。

また、中長期的な企業価値の最大化に向け、当社の将来像として「PBR1倍以上」を掲げています。前中期経営計画からの継続課題となりますが、中期経営計画2026-2028では、中長期的な目線を踏まえ、実現に向けた具体的な施策を織り込みました。ステークホルダーの皆さまには中計の進捗状況を今後のIR活動の中で実績としてお示しし、成長戦略へのご理解を深めていただくとともに、新たな領域へ挑戦し続け、「SHINKA」を遂げることで、企業価値向上を実現してまいります。株主・投資家の皆さまをはじめ、すべてのステークホルダーの皆さまには、引き続きご理解・ご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

代表取締役社長 浦田 成己